僕の欲しい君の薬指



ベルガモットの香りに酔いそうになる。それ位、今日の珠々さんの香りが濃い。

知らない体温を感じた自分の素肌が、僅かに震えた。相手の手によって露わにされた身体。膨らんだ胸を唯一申し訳ない程度に隠しているのは、ちょっと背伸びをして買った大人っぽい下着だけだ。


呼吸が次第に荒くなっていく。それに合わせて、己の胸の膨らみが上下に動く。私の腹に彼の手が触れ、鳩尾から臍《へそ》にかけて薄っすらと浮いている筋を辿る。その後を追うのは、相手の熱い唇だった。



「汗ばんでる。恐い?」



腰を両手で捕らえて親指で何度も何度も撫でる相手が投下する問いに、答えられない。さっきからずっと唇がガタガタと揺れ動いて思うように動かないのだ。

天糸君以外の人間に初めて身体を触られた。その事実が思うさま苦しくて、そして悲しくて、私はその感情のやり場に困った。



こんなにも…こんなにも、あの子以外に触れられると嫌悪感に襲われるんだ。あの子以外の体温が伝うだけで、こんなにも恐くて不快なんだ。


嗚呼、結局私は何だかんだであの子に触れられる度に嬉しかったんだ。悦に浸って、快感を覚え、あの子が一方的に押し付けてくる深すぎる情愛に困りながらも、素直な身体は歓喜していたんだ。


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