僕の欲しい君の薬指
耐熱硝子で作られたとても綺麗なティーポットに深紅色の液体が揺れている。それをソーサーに乗っているティーカップに綺夏さんが注げば、揺蕩う湯気から甘酸っぱい香りがひらりと広がった。
お茶を淹れているだけ。それだけのはずなのに、群青色の髪を一纏めにして結っている人物は息を呑むまでに美しくて、ついつい凝視してしまう。
「これは月弓ちゃんのね」
「え、私のもあるんですか?」
「勿論。暫定的にしろ、月弓ちゃんは今は僕と珠々のルームメイトだもの」
ポンポンと自らの横にある空席に座るように促しながら、深紅色のフルーツティーが揺れるカップとソーサーを差し出す彼が唇に弧を描く。
私が綺夏さんの隣に腰掛ければ、膝上に温かくなっているソーサーが置かれてそれを受け取った。
「三種のベリーと林檎のフルーツティーだから、ノンカフェインだしお肌にも優しいの」
「ありがとうございます」
「はい、珠々も取って」
「いらねぇよ、こんな血みたいな飲み物。大体お前がそれを持つとヴァンパイアにしか見えねぇんだけど」
「……殺されたいの?僕が肌に良いから飲めって言ってるんだよ。逆らうなら本当に珠々の首筋に噛み付いて血を啜ってあげようか?」
「……」
コテンと首を横に折り曲げて破顔した綺夏さんは、大変お美しいのに大変恐かった。