僕の欲しい君の薬指
狂気の深淵にいるにも関わらず、彼はひたすらに美しい。この一瞬を切り取って額縁に入れて飾りたいくらいに、艶やかだ。
そんな天糸君に対し私の心はまた恋をする。もう幾度となくこの子相手に恋に落ちている。落ちて、落ちて、落ちて、それでもまだまだ底が見えない。
もしかすると永遠に、息絶えるまで、私は恋に落ちてしまうのかもしれない。
「ふふっ、左手薬指がなくなったら、月弓ちゃんは一生誓いの印を嵌められないね」
「天糸君…」
「僕をここまで可笑しくさせたのは、月弓ちゃんだよ。責任取ってよ」
狂っている。狂っているよ、天糸君。ここまで貴方が狂っていただなんて知らなかった。常軌を逸した天糸君の愛情に、逃避なんて小細工はちっとも通用しないんだね。漸く気付いたよ、やっと覚ったよ。
私は狂った天糸君の愛情を受け止める。私のせいで、私の為に、私だけに、ここまで狂ってしまった天糸君を愛してる。
どうしようもなく、愛してる。