僕の欲しい君の薬指


薬指にキスをする彼が歯を立てれば、本当に私の指は嚙み千切られてしまうのかもしれない。それなのに、不思議と恐怖心はなかった。寧ろ、期待にも似た高揚感が全身に巡っていた。



「月弓ちゃん、永久に僕だけの物になって下さい。僕と、結婚して下さい」



艶やかな声で囁かれる甘い甘い求婚の言葉。心臓がこれまでにない大きな音を立てた。


私の薬指を彼が口に含んだ刹那、鋭い痛みが襲った。その痛みに表情がぐしゃぐしゃと崩れる。痛い。とても痛い。だけど、何故かそれ以上に幸せだ。



「いっ…たい…」



出来立てほやほやの傷口をなぞる相手の熱い舌に刺激され、痛みが急激に悪化する。咄嗟に手を引っ込めてしまいそうになったけれど、それを彼が赦してくれるはずもない。



「美味しいね、月弓ちゃんの血。僕の中に月弓ちゃんの血が入ってるなんて、本当に一つになったみたい」



どんどん溢れ出る血液を余すことなく舌で受ける彼が、口の端を持ち上げる。





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