僕の欲しい君の薬指


昔、私が彼に贈った指環。随分と安物だったからすっかり鍍金(めっき)も剥がれてしまって、元がどんな色をしていたのかすら思い出せない程に年季が入ってしまっている。


それを咥えて器用に自らの薬指から外した天糸君は、僅かな躊躇いも見せぬまま自らの薬指にも噛み付いた。ポタリ…彼の左手薬指から新鮮な血が滴り落ちて、私の頬を滑っていく。



「月弓ちゃんとお揃いだぁ」

「駄目!!!!天糸君の身体は傷付いちゃ駄目!!!!」



ほぼ脊髄反射で両手を伸ばして出血している彼の薬指を包み込み、これ以上の出血を制した。止まらない血が広がって、生温いねっとりとした液体が私と彼の手を染める。


自分の傷付いた薬指よりも、天糸君の薬指に刻まれた傷口に強烈な痛みを覚える。私達の手を真っ赤にする血は、ぐちゃぐちゃに混ざってもうどれが誰のそれなのか分からない。


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