僕の欲しい君の薬指
縋る様に必死に彼の手を握る私の行動に、相手が吃驚している。麗しい貌には、若干ではあるものの動揺と戸惑いも見て取れた。
「どう…して……」
悲しみと虚しさを孕んだ声が、彼の口から零れ落ちる。吸い込まれてしまいそうな翡翠色の瞳をあてもなくユラユラと揺らして、意表を突かれたせいなのか幼子みたいにあどけない表情をしている天糸君に、心臓が「この子を愛してる」と云わんばかりに脈を打つ。
困惑している天糸君は実に稀だ。何だって容易にこなしてしまうこの子は眉目秀麗で、聡明叡知《そうめいえいち》。不自由なんて単語はこの子の中の辞書に存在すらしていないと思う。
嗚呼、この子を私だけの物にしたい。こんな天糸君の一面を知っているのは、永遠に私だけで充分だ。私の愛で、この子を縛り付けてしまいたい。
箍が外れた私の情愛が、手の施しようのない暴走を始めている。もうきっと、誰にも止められないだろう。私自身ですら、この暴走を阻止する事なんて不可能だ。
「どうして止めるの…どうして変に期待を煽るの!!!!月弓ちゃんの意地悪!!!僕が月弓ちゃんを狂おしいまでに愛してると知っていながらこんな風に甘い言葉を掛けるなんて残酷なだけだよ!!!こんなの…こんなの…重罪でしかないんだよ月弓ちゃん!!!」