僕の欲しい君の薬指


発狂して声を荒げる相手の乱れた熱い息が、私にの毛先をふわりと浮かせる。そうだね、重罪だね。私は法では裁けない罪人だと自分でも思うよ。だって、誰もが羨むアイドルの貴方をこんなにも狂わせてしまったのだから。


なけなしの理性を働かせて、いつもギリギリの瀬戸際で己を保っていた。貴方への恋心と情愛を自覚して呑み込んでしまってはいけないと、自らを戒めて生きてきた。

だけどもう疲れちゃったの。自分でも恐れていた己の本能に抗える自信が底を突いてしまったの。



「うん、だから重罪を犯した罪を償おうと思う」

「何…言ってんの」

「いくら愚図でポンコツな私でも、流石に重罪を犯した自覚くらいはあるよ天糸君」

「月弓ちゃんの言っている意味が全然分からない」

「そうだよね、それじゃあ簡潔に言うね」


“好きだよ、天糸君”



人生で初めての告白が、空間に響いて溶ける。「え…」大きな目を見開いて短く驚嘆する彼の頬にそっと手を伸ばして撫でれば、麗しいお貌が私に触れられた部分だけ紅く色づいた。


< 232 / 259 >

この作品をシェア

pagetop