僕の欲しい君の薬指
どうして教えてくれなかったのだろうか。と云うより、どうして私は知ろうとしなかったのだろうか。胸中を覆うどす黒い感情を抱えたままちらりと一瞥したのは、淡い青色に光る水槽を悠然と漂う海月の姿。
視線がテレビへと戻った時には、既に他のメンバーへの質問コーナーに切り替わっていた。
プロのヘアスタイリストさんにセットされていると、同じ銀髪なはずなのに随分と雰囲気が変わるな…嗚呼でも、駄々洩れしている色気は相変わらずだ。
「ふーーーん、月弓ちゃんやっぱり珠々が好きなんじゃないの?」
ぼーっと画面を眺める傍ら、吸引を再開して檸檬紅茶を飲み干した刹那、耳元で冷たく溶けた声に身体が跳ねた。驚いた衝撃で気管に檸檬紅茶が入ってゲホゲホッと噎せる。
「なに、まさか図星?」
「そんな訳な…きゃっ…「図星だったら刺し殺すよ?」」
“月弓ちゃん”
ぐらりと意思関係なく自らの身体が傾いて倒れ、ソファに溺れる様に沈む。その拍子に舞い上がり、陽に照らされてキラキラと煌めく埃の中で、寝癖が踊っているブロンドの髪を揺らした彼が、私の喉元へ舌を這わせた。