僕の欲しい君の薬指
「月弓ちゃん胸大きくなってる」
「天糸君のせいだよ、隙あらば触ってくるんだもん」
「煽んないでよ。優しくしてあげられなくなるじゃない」
“まぁ、最初から優しくするつもりなんてないんだけどね”
翡翠色の双眸に映るのは、私だけ。ずっとこのままこの瞳の中に監禁されたい…なんて我儘心が芽生えてしまう。
私を情愛の海に突き堕として溺れさせた彼の名前は、涼海 天糸君。絶大な人気を誇るアイドルグループApisのメンバーで、そして私の可愛い従弟で、更には私の愛おしい恋人だ。
この愛は、禁忌に塗れて、背徳に染まって、狂気に沈んで、歪んでいる。この先、普遍的な道程は決して待っていないだろう。それでももう手放せない。抜け出す方法も、逃れる術も何もない。
ただただ溺れて、溺れて、溺れて、溺れて、そうして最期は溺死する。この愛は、そう云う愛だ。
「…天糸…君…」
「月弓ちゃん、可愛い。月弓ちゃん、大好き。月弓ちゃん、愛してる」
身体中に散りばめられた相手の印がまるで毒を持っているかの如く、赤紫色が青紫色に変わっていく。乱れる呼吸すら口付けで塞がれ、身体に取り込まれる酸素や吐き出される二酸化炭素さえも毒されていく。