僕の欲しい君の薬指



「どうしよう…幸せ」

「へ?」

「幸せで堪らない。月弓ちゃんが嫉妬してくれてるなんて夢みたい。月弓ちゃんがこんなにも僕の事で狂ってくれるなんてうっとりしちゃう」

「……」

「でもね月弓ちゃん、僕がこの世で唯一心を囚われているのは、僕が唯一愛しているのは月弓ちゃんたった一人だよ」



嘘つき。だってさっき、テレビに出演している貴方は海月を愛していると言っていた。それにこの家に越して来た時にも既に美しい水槽の中には海月が囚われていた。


矛盾している彼の発言に眉間に力が入る。海月に嫉妬してるなんて馬鹿馬鹿しいと嗤われるかもしれないけれど、それでもやっぱり納得できなかった。彼の愛は私だけの物じゃないと腹立たしくて仕方がない。



「涼海 月弓」

「……」

「月弓ちゃんのお名前の漢字をよく考えてみて。最初と最後の漢字を抜いてみて」

「あ…」

「海と月。くっつけると海月になるの」

「…っっ」

「公共の電波に乗せて本当は全世界の人間に牽制したいよ、月弓ちゃんは僕だけの物だって。だけどアイドルをしている手前そんな事は絶対に言えないからああ云う言い方しかできないの」



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