僕の欲しい君の薬指
抵抗を試みたけれど、全て阻止されてしまった。私だけがいつまでも彼は幼いと思っていただけで、彼はいつの間にか私の抵抗を容易に捩じ伏せられる程に成長してしまっていた。
何もかもが壊れてしまった。全てが滅茶苦茶になってしまった。あの日以来、天糸君の狂気的な愛情に私は囚われ続けている。どんなに逃げても、どれだけ彼の柵から抜け出そうにも、必ず彼に捕らわれる。
「僕がどうして今までお利口さんに大人の云う事を聴いてきたと思う?」
「……」
「大人の信頼を勝ち取る為だよ。きっと月弓ちゃんが真実を叫んでも、僕の嘘を大人達は信じるよ」
「……」
「そうなる様に、少しずつ少しずつ僕が仕組んだんだもん。だからね、僕に襲われたって月弓ちゃんが言ってもだーれも信じてくれないんだよ」
「どうしてそんな事…」
「どうして?決まってるよ」
“愛してる月弓ちゃんを、僕だけが独り占めする為。それだけだよ”
泣いても喚いても、無駄だった。「僕の為に泣いてくれてるの?可愛い」狂気に冒されている彼は、どんな私も双眸を蕩けさせながら自らの腕の中に閉じ込める。花が綻ぶ様に笑みを咲かせ、私の首元を緩やかに締め付ける。
だから私は生きるのがしんどくて堪らない。天糸君の愛情に無理矢理沈められて、息を吸っても吸っても苦しいだけ。