僕の欲しい君の薬指
唇を引き裂く様にして口腔内に侵入した彼の舌が、熱かった。私の舌を絡め取って、音を立てる。それが耳に触れて、恥ずかしさと悲しさと苦しさとで涙が滲んだ。
息ができない。こんなに濃厚で深いキスをされるのは初めてだった。酸素を取り込むタイミングも分からず、好き勝手に犯される。徐々に徐々に減っていく酸素がいよいよ切れそうになり、ジタバタと暴れて逃れ様としたけれど、天糸君は決してそれを許してくれない。
嗚呼、どうして天糸君はいつもいつも私を苦しめるの?私を窮屈な世界に閉じ込めるの?どうしてそんなに意地悪なの?
悔しくて涙が溢れて頬へ流れる。いっその事、このまま窒息死できたら良いのに。死に縋ろうとするそんな私の思考をも見透かしているのか、酸素が丁度底を付いた瞬間に相手の体温から唇が解放された。
「ハァ…ハァ…」
生を手繰り寄せる本能が、思い切り酸素を取り込んで肩で呼吸を整えてしまう。泣きながら酸素を必死に体内へ迎え入れる私とは裏腹に、天糸君は呼吸一つ乱さずに視線をこちらに注いでいる。
「あーあ、どうしよう、月弓ちゃんが可愛くて仕方ないや」
幸せそうに目を細めた彼が、泣きじゃくる私の涙を舌で掬った。