僕の欲しい君の薬指
大学に入学したのも束の間、隣接している大学付属の高校に見目麗しい新入生が現れたと云う噂が耳に入った。
絶世の美男子。国宝級美形。誰もが彼の虜になる。何処までが真実で何処からが虚偽なのか分からない噂で大学は持ち切りで、連日その子を一目見たいと女子大生が話に花を咲かせている光景を幾度となく目撃した。
しかし、生憎私はその噂を耳にするのは初めてではなかった。「絶世の美男子」「国宝級美形」「誰もが彼の虜になる」どの謳い文句も“彼”にならとてもよく当て嵌まる。
「月弓ちゃん、お迎えに来たよ」
“僕と一緒に帰ろうね”
大学生の中に制服姿の人間が混じっているだけでも十分に目立つと云うのに、突然私の目前に当たり前の様に登場した“彼”は、噂通り周囲の視線を独り占めしていた。