僕の欲しい君の薬指
衝撃的光景に目が飛び出てしまいそうだった。栗色の髪の下から現れた陽の光を反射させる美しい銀髪。何が起こったのか理解するまでに時間が掛かった。それと同時に、栗色の髪に対する違和感の謎は解けた。
ウィッグだったから若干不自然に見えたのか。そうだ、私が抱いていたのは天糸君がウィッグを被っている時と同じ違和感だったんだ。
「やっぱこれの方が百倍涼しいな」
芝生目掛けて乱暴に脱いだウィッグを放り投げた男性は、解放感に満ち満ちた笑みを浮かべて残りのアイスをあっという間に平らげてしまった。
自慢じゃないが、幼い頃から私の隣には天糸君がいた。彼がいかに美しい人間かはきっと誰よりも私が知っていると思う。そんな従弟と共に成長したせいで私の目は肥えてしまったはずだった。
だけどどうだろうか、目と鼻の先にいる男性の妖艶さに魅入ってしまっている自分がいる。
あれ?私、前に何処かでこの人に逢った事があったっけ?不意にそんな疑問が頭を過った。