僕の欲しい君の薬指
番組の収録で遅くなると天糸君から連絡があったせいですっかり気が緩んでしまっていたのだと思う。提出しなければならない課題を終わらせた達成感も重なって、ソファで寛いでいたらいつの間にか眠りに落ちてしまっていたらしい。
身体を揺すられ、重たい瞼を持ち上げて、目を擦りながら欠伸を零し、やがて鮮明になってきた視界に映り込んだのが、すぐ近くで頬杖を突いてにっこりと口許を緩めている天糸君の綺麗な貌だった。
「月弓ちゃんの寝顔を愛でていたらいつの間にか一時間も過ぎちゃってたみたい」
恐ろしい言葉を添えられて、咄嗟に視線を時計に移した。時刻は夜の十一時を回る所だった。
私の頬を指先で撫でる彼。時々ひんやりとした感覚が伝うのは、彼の薬指に嵌められた指環が私の皮膚と接触しているせいだ。
嗚呼、眩い。昔から私にとってこの子は余りにも眩かった。この子が芸能界に入ってから、彼の眩さは日に日に増している。
「キスしても起きないんだもの。意地悪してキスで月弓ちゃんの呼吸を止めたくなっちゃった」
「え!?」
背中を氷がなぞる様な感覚が走った。唇を手で拭おうと試みたけれど、私の行動なんて全てお見通しなのか天糸君の手によってあっさりと手首を拘束されて制される。抗いたくて上体をソファから起こそうとしても、それすら天糸君に阻まれてそのまま押し倒されてしまった。