僕の欲しい君の薬指
頭の中が真っ白になった。私の肌に吸い付く彼の唇の熱は夢でも幻でもなく現実のそれで、あっという間に全身から血の気が引いていく。
ペラリと紙を捲るくらい容易にトップスが乱され、下着で覆われていはいるものの胸すらも彼の視線の元に晒されている。それが恥ずかしくて、悔しかった。
「やめて…やめてよ、天糸君」
「やめない」
これまで、強引に唇を奪われる事はあってもここまで踏み込んだ行為を彼はしてこなかった。だから私も心の何処かで油断していたのかもしれない。“天糸君はキス以上の行為をしない”って決めつけていたのかもしれない。
意地悪な微笑が元より美しい彼の貌を更に装飾する。天糸君はそれはそれは愉快そうにふふっと声を躍らせている。その姿にひしひしと狂気を感じるのだ。
私の素肌を這う彼の手は熱が籠っていた。「月弓ちゃんって、スタイル良いよね。ウエストなんて凄く括れててとっても綺麗」そんな言葉を並べる相手に、顔が羞恥心で紅潮する。
自分の両手首は彼の片手にがっちりと拘束されている。天糸君が私の上に跨っている体重で両脚もまともに動かせない。そこには確かに、男と女の対格差が生じていた。