僕の欲しい君の薬指
狂ってる。彼の全てが狂ってる。私がどんな言葉を投げ付けたって効果がない。己がいかに無力かと云う事だけを一方的に突きつけられる。
「僕、やめるつもりなんてないからね」
目尻を下げて妖艶な笑みを湛えた後、彼の舌が私の鎖骨を嬲った。熱くてドロドロとした唾液が皮膚に纏わり付き、空気に触れて冷たくなる。慣れない感覚に身体が疼いて落ち着かない。
出したくもないのに甘ったるい声が漏れる。吐息にも熱が籠る。せめてもの抵抗として顔を逸らしても、すぐに相手が唇を塞いで視界を独占する。そうして私の呼吸は苦しくなる。
「そうやって可愛くて甘い声、僕以外の人間の前で出しちゃいけないよ」
「…んっ…ぁあっ…嫌だ。もうこれ以上は嫌だよ天糸君」
「心配だなぁ。月弓ちゃん、僕に平気で嘘を吐くんだもの。他の野郎の性欲を煽らないか不安で堪らない」
「そんな事…しない…」
「信用できない」
「やっ…きゃっ…」
細長くて綺麗な指が下着の上から私の胸に触れた。彼の指が食い込む様に胸に沈み、とうとう耐えられなくなった私はハラハラと涙を落とした。