僕の欲しい君の薬指
辱めを受けた私の情緒があっという間に不安定になる。彼の口から甘い吐息が漏れ、私の胸の上で溶ける。ゴクリと生唾を呑み込む彼の体温が上昇したのが私の肌にも伝わった。
「見ないで…お願いだから見ないで天糸君」
私の請いは受け入れて貰えないらしく、彼は決して視線を逸らさない。「どうして?綺麗だよ、月弓ちゃん」そんな台詞を並べて再び甘ったるい溜め息を零した。
涙が止まらない。頬がぐしょぐしょに濡れているだけでなく顎から伝った雫が私の鎖骨へと流れ着く。それをペロリと舌で舐め取った相手は震える私の唇にキスをする。
認めたくないけれど、私の唇はすっかり天糸君の体温を覚えてしまっていた。
「月弓ちゃんって、着瘦せするタイプだよね。勿論悪い意味じゃないよ?こんなに豊満な胸がいつも服の下に隠れているだなんて、きっと誰も知らないだろうね」
「もう何も言わないで」
もう何も聴きたくないよ。これ以上の息苦しさなんかいらないよ。
これ以上苦しくなったら、私は恐らく溺死してしまうだろう。地上で生きているのに溺死だなんて妙な表現だとは思うけれど、その言葉が一番ぴったりだ。
「本当に綺麗だよ、月弓ちゃん」
体温が上昇した彼の手が、纏う物を失った私の胸を包み込んで果実を捥ぎ取る様に指を喰い込ませた。その感触を二、三回確かめた彼は瞳孔を開かせて鼻の孔《あな》も膨らませた。
異常なまでの興奮を天糸君が覚えていると云う事は、火を見るよりも明らかだった。