『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

心臓がもたない。
今にも爆発してしまいそうだ。

「どうした?」

どうした?……じゃなぁぁぁいっ!!
近すぎるでしょっ!!
これじゃあ、身動きが取れやしないっ。

「響さん、……近いです」
「え、そう?」
「はい、……わざとですか?」
「……だとしたら?」

こんな風にパーソナルスペースに入り込んで、女性を誑かしてるんだ。
こんなイケメンにこういうことされたら、余程のダメ男好きでない限り、簡単に落ちてしまうだろう。

危ないあぶない。
こんな手には乗るもんか。
私はあなたの遊び相手になるためにここに来たんじゃない。

「不要なスキンシップはお控え下さい」
「何で?」
「何でもです!」
「そんな事、契約書には書いてなかったよ?」
「は?」
「肉体関係はダメだと明記してあったけど、スキンシップはダメだとは明記されてないよね?」
「………」

これ、完全に確信犯だ。
遊び慣れている彼だから、こういうことも想定内なのだろう。
ならば、目には目を歯には歯をするまでだ。

「う゛っ……っ……」
「あっ、ごめんなさい。身動きが取れなかったもので」

体を捻るふりをして、肘をみぞおちに見舞ってやった。

「近づきすぎると危ないですよ?」

例え、大好きなあなたであっても、他の女性と同じにされたくない。
たった一度だけのために、この十年我慢して来たんじゃないんだから。

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