『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
何だよ。
ドキドキもしねぇのかよ。
いい雰囲気だと思ったからアプローチ仕掛けてみたのに、あっさりとかわされてしまった。
それも、毛嫌いするかのように反撃までして。
マジでへこむ。
そんなに嫌なのかよ。
たじろぐ身じろぐ素振りすら見せず、速攻で拒否して来やがった。
まぁ、だからといって怖気づくような俺じゃねぇけど。
なめんなよ。
燃料満タンでエンジン始動した俺を止めれるもんなら止めてみろ。
*
ダイニングで鍋を囲む。
目の前にいる彼女は俺のことを熟知している。
好き嫌いは勿論のこと、特技や些細な癖に至るまで。
そう考えると、不利だよな。
俺はずっと見守って来たけれど、これといって核なる部分を何一つ知らない。
まずは、底辺から埋めて行くとするか。
「芽依の好きな食べ物って何?」
「何ですか、唐突に」
「いや、一緒に生活するわけだから、そういった部分も知る必要あるだろ」
「好き嫌いはありません」
「それ昼間に聞いた。好物くらいあるだろ」
「……そうですね、……油っこものよりさっぱりしてる方が好きです。辛いのも結構食べれますし、甘いものは程々に食べます」
「う~ん、なるほどな。酒は?」
「嗜む程度には飲めると思います」
「そっか」
この間の見合いの時にビールを結構飲んでたから飲める口だとは思ってたけど。
うーん、掴みどころがない。
これが好き!これは嫌い!!というのが知りたいんだけど、きっと教える気は無いんだろうな。
「じゃあさ、俺をダメだしするとしたら、どこをダメだしする?」
「……はい?」