『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす



入浴を済ませ、寝室へと。
先にお風呂を済ませた芽依が既に寝ている。

この半月。
毎夜必死に理性と闘い、触れることすら我慢していたが、……もう我慢するのはやめることにした。

“肉体関係は結ばない”という契約であって、“指一本触れてはいけない”というルールではない。

意識がある時に触れたら、払ったり嫌がったりするかもしれないけれど。
さすがに寝ている間に拒絶するとは思えない。

この二週間、彼女を観察してみたが、就寝中は意外といけそうな気がする。
無防備を襲うようでちょっと心苦しいけれど、ルール違反をするわけではないんだから……。


静かにベッドに潜り込む。

芽依は規律のいい寝息を立てて、気持ちよさそうに寝ている。
いつもの如く、ベッドの端に丸まるように体を縮こませて。
そんな格好で寝たら、疲れが取れるものも取れないだろうに。

そぉ~っと首の下に腕を滑り込ませ、回転させるように体の向きを変える。
そのまま彼女の体を抱き寄せて―――。

これこれ、こうじゃなきゃ。
甘いフローラルなシャンプーの香りが、胸をきゅんと疼かせる。

いつでも近寄りがたいオーラを放っている彼女が、こんなにも無防備で俺の腕の中にいるだなんて、夢のようだ。

優しく髪を撫で、髪や額に嫌というほどキスを落とす。

その十数センチほど下にある部分にキスをしたいところだが、さすがに寝てる時に初めてのキスを貰うわけにはいかない。
やっぱりそれは起きている時に、俺を意識した上で受け入れて貰いたいから。

寝起きの反応が楽しみだ。

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