『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

翌朝。
いつもは枕の下にセットしてあるスマホのバイブアラームで目覚める私は、珍しくアラームを止めずに目が覚めた。
いつもと違う枕の感触に違和感を覚え、瞼を持ち上げた、次の瞬間。

「………え?」

ありえないものが視界に映った。

彼の唇がおよそ三センチほどの距離にある。
しかも、何これ……。
彼に腕枕して貰ってる状態で抱き締められてるし、私の腕が彼の体に巻き付いている!

何をどうしたらこうなるの?!
もしかして、寝ている間に何かあったとか……?

記憶にない。
全くもって記憶にない。

昨夜はお酒を一滴も飲んでないのに。
誰か、教えてー!!
というより、この体勢まずくない?

彼の体に回してる自分の腕を回収したところで、彼の腕の中から逃れるわけではない。

ごくりと生唾を飲み込んで、抱き締めるように回されている彼の腕をそぉ~っと退けようとパジャマの生地を抓んで持ち上げた、その時。

「んっ……!!!!!」

そっと抱き締められていた体が、更に密着するように抱き締められた。
もう無理っ!!
頬にかかる彼の吐息と拘束される腕の逞しさと、胸がトクンと無条件で跳ねてしまういい香り。
彼が少しでも体勢を変えるように動いたら、唇が触れてしまいそう……。

ベッドの端に寝ていたはずなのに、なぜベッドのど真ん中にいるのだろう?

もしかして、私が彼を襲ったの?
え、……そうなのっ?!!
嘘でしょぉぉぉ~~っ!!!

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