『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「副社長?………響さん、……響さんっ」
「……ん……っ……」
数年ぶりに熟睡した。
昨夜、一大決心をして寝入っている芽依を抱き締めて眠りについたけれど。
最初は緊張して中々寝付けなかった。
自己満足で抱き締めてしまったから。
けれど、三十分ほどした時、寝返りを打とうとした彼女が、俺の体に腕を回して来た。
抱き枕か何かと勘違いしているのは分かっている。
分かっているけれど、その満足感というか、何とも言えない温かいぬくもりが心地よくて。
いつの間にか寝入っていたようだ。
初めて同じベッドで朝を迎えた女性が、芽依だということが堪らなく嬉しくて。
俺の腕の中で身じろいでいる彼女の呼びかけを軽くスルーしている。
まだ起きたくない。
このまま、今日は仕事を休んでしまおうか。
「響さんっ、……起きて下さいっ」
今何時なのか分からないが、彼女が起床する時間は過ぎているのかもしれない。
仕方がない。
また今夜、楽しめばいいか。
「んっ……おはよ」
「あ、おはようございますっ!私そろそろ起きないとならないので、この腕、離して貰えませんか?」
「やだ、……あと五分だけ」
「っ……、ダメですっ!私遅刻しちゃいますから」
「いいよ、たまには俺と一緒に出社すれば。外回りして出勤したことにすればいいし」
「そういうことは出来ませんっ!」
軽く小突くみたいに俺の胸を叩いて来た。
もう無理か。
「分かった」
そっと腕を緩めると、ゆっくりと上半身を起こした芽依。
乱れる髪を手櫛で直すみたいにしている。
そんな彼女の腕を掴んで引き寄せた。
「ぁっ……」