『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「今日みたいに、モーニングコール毎日して」
不意打ちで抱き締め、動揺する彼女の耳元にそっと囁く。
耳まで真っ赤にして、俺の顔をキッと睨んで来た。
「朝からこういうことをしないで下さいっ!」
「夜だったらいいんだ?」
「っ……、夜もダメです!!」
「無理」
「無理と言われても、ダメなものはダメなんですっ!」
俺の腕から逃げるようにベッドを後にした芽依。
「やべぇ、めやくちゃ可愛いっっっ」
今日も一日頑張れそう。
あ~、早く夜になんないかな……。
起きたばかりで寝ることを考えてるって、……中高生かよっ。
けれど、何もかもが浄化されるみたいにすっきりと、それでいて幸せで満たされていた。
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金曜日の午前十一時過ぎ。
パソコンで一月のスケジュールを確認していると。
「失礼します。副社長、先日の検査結果を受け取りに病院へ行って参ります」
「ん、気を付けて」
「副社長宛てに検査結果のメールが届いてますでしょうか?」
「いや、まだ来てない」
「そうですか。では、行って参ります」
如月は副社長室を後にした。
念の為にメールボックスを確認するが、メールは届いていない。
結果が届き次第、あの女に連絡しなければ……。
芽依にとって、知りたくもないであろう事柄。
俺自身でさえ、他人に知られたくないような事柄なのに、一番知られたくない人が一番俺の傍にいる。
今まで散々彼女の存在を見てみぬふりをして来た罰が、今頃になってやって来るとはな。
でもまぁ、自分がしでかしたことだ。
きっちりと自分で清算しないとな。