『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
パソコン内にデータが残っていると危険があるため、すぐさま削除し、ごみ箱内も削除した。
程なくして、如月が戻って来た。
その手には法的な鑑定書として使用できる書類が入っている封筒を手にして。
「只今戻りました」
「お疲れ様、悪かったな、手を煩わせて」
「いえ、これが仕事ですので」
一般的な秘書であれば、こんなことに首を突っ込んだりしない。
俺がしでかした過ちなんだけど。
淡々と口にする彼女を一瞥し、胸の奥がチクっと痛んだ。
「こちらが書類になります」
「ありがとう」
「では、失礼します」
いつもと何ら変わらない表情。
クールで飄々とした顔。
彼女は検査結果が気にならないのだろうか。
あの女が会社に乗り込んで来た時は、結構動揺した感じだったのに。
心配そうに俺を見つめる瞳が印象的で、不埒だと分かってるけれど、脳内に俺がいると思うと嬉しかった。
「如月」
「……はい」
ドアの前まで歩み進めた彼女が振り返った。
「検査結果、肯定率0%だから」
「……そうですか。失礼致します」
一瞬だけ、安堵したように見えた。
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その夜。
取引先との会食を済ませ、帰宅した俺は先にシャワーを浴びた。
一旦、自宅のマンションまで井上の運転する車で帰宅し、それから俺のマンションへと帰宅した芽依。
その手には、細長い紙袋が握られていた。
「おかえり」
「遅くなりました」
「買い物して来たのか?」
「はい、……今日、クリスマス・イヴなので」
「あ……」
仕事に追われてすっかり忘れていた。