『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「シャワー浴びて来ます」
「ん」
芽依は着替えを取りに寝室へと向かって行った。
彼女の着替えはウォークインクローゼットの一角をあてがってある。
リビングのソファーに腰を下ろし、頭を抱える。
クリスマスプレゼントを用意してない。
どうしたものか。
仕事に追われていたとはいえ、俺らしくも無い。
あの女の一件があったから、ついつい神経がそっちに向いてしまっていたのかもしれない。
明日は土曜日。
デートがてら、芽依を連れて出掛けた際に何か買ってやるか。
『要らない』と言いそうだけれど、何もあげないわけにもいかないよな。
恋人でもない女に贈り物をして来た俺が、八年も片想いしてる意中の女性に何もプレゼントしないだなんて、俺のプライドが許さない。
どんな物なら喜ぶだろうか?
*
シャワーを浴び終えた芽依は、キッチンで何やらしている。
「明日の朝食の準備か?」
「いえ、おつまみです」
「つまみ?」
「はい、白ワイン買って来たので、如何ですか?」
「……フッ、本当に隙が無いな」
俺が白ワインを好きな事を知っていて、さっき買って来たのだろう。
手にしていた細長い紙袋は恐らくそれだ。
「旨そうだな」
「簡単なものですけど、アボカドの磯部チーズ焼きとチョコとベリーのカッサータです。塩気と甘味のどちらでもお好きな方を」
「じゃあ、グラスを用意するな」
「ありがとうございます」