『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
もしものことがあったら、正気じゃいらねぇ
翌朝。
昨夜は結局ヒートアップしたトークは攻防戦を繰り広げ、彼女が欠伸をしたのを機に、就寝することにした。
そして、彼女が寝入った頃を見計らって、前日同様、時間差でベッドに潜り込んだ。
勿論、腕の中に彼女を閉じ込めて。
これ、本当に病みつきになりそう。
今まで女を抱くことはあっても、抱き締めて眠りに就いたこともなければ、朝まで同じベッドで寝たこともない俺が、自ら望んでそれをしている。
しかも、抱き締めて眠ることが、こんなにも満たされるとは知らなかった。
こんな風に俺に欲情を抱かせる女は、彼女しかいない。
十二月二十五日。
しかも土曜日だ。
今日は久々の完全オフ日。
明々後日から年末年始休暇になるから、正直それも決めたい。
芽依は実家に帰るのだろうか?
「んっ……」
芽依が目を覚ましたようだ。
そして、俺に気付き硬直した。
ビクッと肩を震わせたと思ったら、めちゃくちゃ心臓の音が早いのが分かる。
好きでもない男でも、やっぱりこんな風に抱き締められたらドキドキするものなんだな。
寝たふりをして、少しでも長くぬくもりを味わえるように必死に堪える。
寝ぼけてキスでもしてくれないかな。
……んなことあるわけないか。
芽依がモゾモゾと腕の中で動き始めた。
尚も腕の拘束を解かずに抱き締めていた、その時。