『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

けれど、この三年。
彼女の仕事ぶりは至って真面目で。

それまで採用して来た秘書は誰も、俺目当てで応募して来た者ばかり。
秘書にさえなれば、俺に近づけるとでも思ったのだろう。
仕事中でも所かまわずアプローチを仕掛けて来る女ばかりで。

一応、これでも仕事は真面目にしている。

女遊びが激しかろうが、仕事においては一切妥協しないスタンスの俺は、仕事を怠ける輩は容赦しない。
だから、採用しても一カ月ともたなくて、常に求人を出し続けていた。

そんな時、俺の前に現れた彼女・如月 芽依は、秘書業務を完璧にこなすうえ、他の秘書とも一線を置き、俺の情報を一切漏洩させない仕事ぶり。
更には、俺のプライベートの部分まで完璧にフォローするという徹底ぶり。

別に秘書は彼女じゃなくても構わない。
好きな女に女遊びが筒抜けって……何これ、拷問？誰得？？的なもんだろ。

「副社長？」
「……してない」
「え？……なさらなかったんですか？」

好きな女から『避妊はなさいましたか？』って……。
拷問だろ。
相手はお前じゃないのに……。

「するとこまでいってない」
「……はぁ」

この女は、どんな気持ちで俺にこれを聞いて来るんだ。
副社長の将来に影を落とす存在を消去するためだけか？
やっぱり、そうだよな。
それ以外に考えられない。

真面目過ぎる彼女の発想なんて、それ以外ありえないだろうから。

「なぁ、如月」
「はい」
「毎回思うが、嫁入り前の娘が口にする言葉じゃないだろ」
「仕事とプライベートはしっかり区別しておりますので、ご安心下さい」

やっぱりそうか。
俺は『男』として見られてないらしい。

グサッと胸を抉られ、流れる景色をただ茫然と眺めていた。