『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
言いたいことを言えずに遠慮してイイ男ぶったとしてても、芽依に気に入って貰えないなら意味がない。
嘘を吐くのとはまた違うかもしれないけれど、ありのままの俺を曝け出さずして手に入れたとしても、いつかその歪が明るみになる。
だったらいっそのこと、最初から気取らず、素の俺を曝け出して、なりふり構わず猛アタックした方が潔いってもんだろ。
中高生の男の子だって、玉砕覚悟で告ったりするんだから。
いい歳した大人の俺が、全力出し切らないでウジウジするとか、マジで意味ねぇ。
そんなもん、恋だの愛だの語れるレベルに到達するのに、何年かかるんだっつーの。
「俺はさ、恋愛には興味がなくて、女なんていてもいなくても何一つ変わらないと思ってた。だけど、芽依とこうして時間を共有するようになって、余裕ぶってる自分に辟易するし、築き上げて来たカッコいい仮面を被った響を演じきるのに正直疲れた」
「……」
「くだらねぇ放埓ぶりを全部知ってる芽依だから、もう隠す必要もないと思ってる。まだ芽依が知らない俺の素の部分も曝け出すつもりだから、それも込みで俺のこと丸ごと見て欲しい」
「っ……」
「ってか、このもつ煮込み、めっちゃ旨い。芽依も食ってみ?」
芽依の取り皿に幾つか料理を取り分ける。
「響さんは……」
「ん?」
芽依が俯いてしまった。
何か言いたいことがあるんだろうけど、躊躇うほど言い難いことなのかもしれない。
「とりあえず、食べて帰ろうか。ここで言い難い話なら、家で聞くし」
「……はい」
「じゃあ、乾杯で仕切り直しな~カンパーイ♪」