『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

「今日じゃなくてもいいし、気持ちの整理がついた時でいいし。勿論、お前じゃ無理だよってのもアリだよ」
「……」
「それはそれで真摯に受け止めるし、だからといって諦めきれないから、また告ると思うけど」
「……フフッ」
「あ、笑ったな」
「だって……、意外すぎて」
「それ、今日三回目」

クールフェイスでしか、見せて来なかった代償だろうな。
こんな風にしつこいくらい気持ちを曝け出すのは……。

「私の……素顔を知ったら、幻滅しますよ?」
「しねえょ」
「ぶっ飛んでる、イカれてる、不思議ちゃん……百面相のように毎日違う私かもしれませんよ?」
「それはそれでいいんじゃね?毎日新しい芽依に出会えて、ときめくだろうし、萌えると思う」
「っ?!……フフッ」
「実家では殻に籠ったような生活を強いられて、一人暮らししても自分を制御して。……もうそういうの要らないから」
「っ……」
「芽依は芽依だし、ありのままの芽依がいい。我が儘言っていいし、辛い時は俺の胸で泣けばいいし。甘えたくなったら、幾らでも聞いてやるから、遠慮なく言っていいよ。芽依だけの特権だから」
「っっ~~っ」

秘書の顔ではない芽依が目の前にいる。
ありのままの自分を曝け出したことによって、少しは心を開いてくれたのかもしれない。

一歩前進……したかな?

「明日、会食入ってたよな?」
「あ、はい。持田商事の社長とランチ会食が十一時半より」
「じゃあ、そろそろ寝るか。打ち合わせの書類まだ目を通して無いから、明日の朝見ないと」
「はい」
「悪いけど、先に」
「はい。……おやすみなさい」
「おやすみ」

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