『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
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響さんから告白された。
夢なんじゃないかと、何度も頬を抓ってみるけど、脳内が興奮してるからか、それほど痛くない。
だけど、両手の中に素敵な花束がある。
夢じゃない。
嬉しくて、涙が溢れて来る。
十年ずっとずっと心の奥に想いを募らせていた人。
初恋の人で、上司でもある。
大手製薬会社の令嬢ではなく、副社長の秘書でもない。
『如月 芽依』として、彼は私を見てくれていた。
絶対ないと思っていたのに。
奇跡より確率が低いと思ってたのに。
諦めなくてよかった。
消さなくてよかった。
たくさん我慢して来た分の反動で、涙が止まらない。
だって、御曹司だから好きになったんじゃない。
彼のスペックも性格も何一つ知らなくても、好きになってしまっていた。
時間が経てば、消えると思っていた。
思春期の淡い恋心なんて、脆くて儚くて。
直ぐに別の人を好きになると思っていたのに。
知れば知るほど、スキが大きくなって。
時間が経てば経つほど、もっと知りたいと欲が出てしまった。
ストーカーのように。
十年もの間、ずっと彼を追い続けて来た。
この気持ちを打ち明けたら、彼は引くかもしれない。
百年の恋も一瞬でさめるかもしれない。
最後の賭けだ。
ここをクリアしないことには、先に気持ちが切り替えせない。
言わなくても問題はないのかもしれないけれど。
彼が真摯に気持ちを打ち明けてくれたように、彼の胸に飛び込むなら、私も心を裸にしなければ飛び込めない。
彼に話そう。
ダメもとだ。
契約は継続している。
最悪でも、秘書であり続けられるのであれば……。