『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「だから、この前話した、……十年前から好きな人っていうのは……」
「俺、……なんだ?」
「っ……はいっ」
「いや、芽依、マジ最高っ!!やっぱ、お前、すげぇよっ!」
響さんが笑ってる。
ストーカーというワードでさえ、笑い飛ばしてくれた。
カミングアウトしたら、気持ち悪がられると思ってたのに。
警察に通報されてもおかしくないのに。
「怖くないんですか?」
「何が?」
「私に。……この十年、ずっとつけ回してたんですよ?」
「でも、それって俺のことが好きすぎてなんでしょ?」
「……はいっ」
「しかも、被害どころか、秘書として俺の役に立ってるじゃん」
「……そうかもしれませんけど」
「じゃあ、何の問題もないだろ」
「………そうなんですかね……?」
「むしろ有難いし、これって運命じゃね?……俺ら」
「っ……」
ぎゅっと抱き締められ、頭を優しくポンポンと撫でられる。
「今何時?……まだ日付変わってないな。……最高のクリスマスプレゼント、ありがとな」
「ッ?!」
チュッと額にキスが落とされた。
不意打ちすぎて、心臓に悪い。
「芽依」
「……はい」
「顔上げて」
「っ……」
色気のある声が耳に届く。
口から心臓が飛び出しそうなほど暴れ狂ってる。
緊張度が既に限界値を超えてるようで、頭の周りで爆竹が鳴り響いてる。
恐る恐る顔を持ち上げる。
見たこともないほどの優しい笑みを浮かべた彼がそこにいた。
視線が逸らせない。
吸い込まれるように瞳をじっと見つめていると。
優しく後頭部が支えられ、彼の顔がどんどん近づいて来る。
………もうダメっ、これ以上は見れない。