『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
生まれて初めて添い遂げたいと思った女性です

十二月三十日。
年末年始休暇に突入し、お互いの気持ちを確かめ合って二人が過ごす、初めての連休なのに。

「何、この手……?」
「近くにいるだけで危険なので、一定の距離をお取り下さいっ」
「は?」

ソファーに座ってテレビを観るだけなのに、隣りに座っただけで両手を目一杯突き出して完全拒否。
やっと会話も弾んで距離が縮まったと思ったのに、ふりだしに戻った感満載。

マジへこむ。
何これ、俺を試してんの?

そりゃあ、隙あらばハグしたいしキスしたいし。
勿論、その先も願望強めなんだけど。

寝ている時は従順というか、寝入ってるから触り放題なんだけど。
それ以外の時、完全にお触り禁止状態が納得いかない。

「俺ら、付き合ってるんじゃないの?」
「付き合って下さいとは言われてませんよ」
「キスしたのに?」
「あれは雰囲気に流されてというか……」
「毎日同じベッドで寝てるのに?」
「それは、契約上の理由からです」

あの甘い夜は何だったの?
クリスマスの魔法が一晩で解けてしまったのだろうか?

「俺のこと、好きだって言わなかったっけ?」
「……そんなことも言ったような言わなかったような……」
「何だよ、それ」

『正式に付き合おう』と言えばいいのか?
ってか、俺はプロポーズ的なことを言ったし、それに応える気があるならって流れだったと思うけど。

「分かった。明日、ご両親にご挨拶させて」
「へ?」
「ちゃんと、俺の誠意を見せないとダメってことだろ」
「………」
「ご都合のいい時間、聞いといて。ちょっと出掛けて来る」

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