『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
着いた先は、セレブ御用達の店としても有名なレストラン。
店内の装飾や食器に至るまで可愛らしさを散りばめたお店。
テーブルの上には色鮮やかなバラが彩られ、セレブが愛用しているお店であっても、気取った感じが一切しない。
色とりどりの花々が咲き誇るパティオの下で、食事をする。
軽快なメロディーと欧州のコテージ風の雰囲気が、緊張する私の心をほんの少しだけ和らげてくれる。
いつも女性と食事をするのは高級なレストランや料亭のような場所が多い彼。
稀にカフェレストランのような場所にも行くけれど、あまり長い時間滞在しない。
雰囲気が苦手なのか、過去に嫌な思い出があるのか。
私には分からない。
けれど、彼と長時間一緒に居ることは変な噂になりかねないから、それを逆手にとってカフェレストランのような場所にした。
とはいえ、舌が肥えてる彼と食事するなら、適当には選べない。
セレブに人気の店であれば、間違いないと思って。
カリフォルニアン・キュイジーヌ。
白ワインが好きな彼のために、美味しい魚介類のメニューが豊富なお店をチョイスした。
それと、プレミアムビーフのサーロイングリルが有名で、柔らかい極上のお肉にカルフォルニア産のオレンジソースが絶品らしい。
「旨いな」
「良かったです、お気に召して頂けて」
「如月の食べたいものじゃなかったのか?」
「はい?………っ、いえ、前から食べたかったお料理です」
しまった、バレたかな……?
彼の好みは知り尽くしていて、ついつい彼中心に全てを判断基準にしてしまっている。