『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「う~ん」
水色のオーガンジーのロングドレス。
悪くはないけど、ちょっと老けて見える。
次々と準備したドレスに着替える芽依を吟味する。
決して悪いわけではないが、しっくりこないというか、これだ!というフィーリングがない。
十着以上試着し、芽依の顔にも疲労感が出始めて来た。
「スカートの丈がもう少し短いのはあるか?脚が綺麗だから膝辺りから下はスッと見える感じで、全体的に上品な雰囲気に」
全体的に落ち着いたデザインが多く、もう少し愛らしさがあると纏まるんだけど。
ソファーに腰掛け珈琲を口にしていると、カーテンの奥から芽依が現れた。
「いいね♪それにしよう!」
サテン地の紫がかった藍色で、上半身はオーガンジーに刺繍があしらわれた上品なデザイン。
七分丈の袖にマオカラーの襟元でシックな雰囲気を醸し出し、膝上からのフィッシュテールの愛らしさをプラスしている。
足下はシャンパンゴールドのピンヒール、デコルテラインはレースのシースルー感でアクセサリーは不要だから、ピアスとブレスレットをヒールに合わせて華やかに。
「お二人で並ぶとより一層華やかですね」
「ありがとうございます」
ダークグレーの細身の三つ揃えでクラシカルな装いに仕上げた俺の横に芽依が立つ。
芽依のドレスに合わせ、ポケットチーフとネクタイの色目を合わせた。
「この一式を」
「有難うございます」
「副社長っ」
「響……だよ」
「……響さん」
「ん?」
「自分の分は支払います」
「いいよ、気にしなくて。甲斐性が無い男にさせたいの?」
「っ……でも……」
「俺のために着飾ってね♪」