『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

翌週の金曜日の昼過ぎ。

「井上さん、副社長のご自宅までお願いします」
「承知しました」

今日は約束の日。
一週間前に芽依からデートの誘いを受け、初めて彼女とデートした日以来の緊張をしている。

車でおよそ十分の距離にある自宅マンションに到着した。

「井上、今日はこれで上がっていいぞ」
「はい、了解です。お疲れ様でした」
「井上さん、お疲れ様です」

エントランス前で井上を見送り、俺らは一旦自宅へと。

「半休取って、何するんだ?」
「少しドライブして、その後まったりとして、美味しいご飯でも食べて……って感じですかね」
「ホントにデートなんだな」
「嫌ですか?」
「いや、全然。むしろ、毎日したいくらいだ」
「フフッ、さすがに毎日は無理ですよね」
「だな」

久しぶりに見た、芽依の笑顔。
キュートで愛らしい。
先日までのロボット秘書は一体何だったのか、さっぱり分からないが、今がよければいいか。

「着替えて、出発しましょう」
「そうだな」

スーツからカジュアルな服に着替えていると、何やら芽依が小さめなキャリーを二つ手にして寝室から出て行った。
すぐさま戻って来た芽依に声を掛ける。

「今の荷物は何?」
「着替えとか必要なものを用意しておきました」
「………え、泊まり?」
「はい」
「え、……マジで?」
「はい、お嫌ですか?」
「いや、全然っ!むしろ、大歓迎」
「フフッ、私も着替えて来ます」
「おぅ」

何なに、どういうこと?
デートはデートでも、お泊りデート?!

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