『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

「このナビの通りに行けばいいのか?」
「はい、お願いします」

響さんの愛車で、彼に運転して貰って目的地へと向かう。

高速道路を使って一時間半ほどの距離。
平日の昼間とあって、道も混んでない。

「江の島?」
「はい。海に行きたいって言ってましたよね?」
「あぁ~、うん。けど、今冬だよ?」
「スパなので、冬でも大丈夫です」
「あぁ、なるほど」

目的地が近くなり、目的地の表示を目にした彼が嬉しそうに笑った。

「えっ、じゃあ、……水着着てくれんの?」
「危ないので、よそ見しないで下さい」
「あ、うん、ごめん。………で、着てくれんの?」
「フフッ、そこ、重要ですか?」
「めっっっっちゃ、重要っ!」
「フフフフフッ、物凄く今溜めましたね」
「だって、芽依の生水着見れんだろ?めちゃくちゃ楽しみじゃんっ」
「そんないいものではないと思いますけど」
「いやいやいやいや、好きな女の水着はテンション上がるって」

楽しそうにチラチラっと視線を寄こす彼。
十代の頃なら堂々と着れたかもしれないけれど、もう十年近く来てないから正直自信はない。
けれど、後悔はしたくないから。
彼との想い出を少しでも多く残しておきたい。



江の島にあるリゾートスパ。
五階が露天風呂付スイートルームになっていて、オーシャンビューの展望も最高の一部屋。
和をコンセプトにしたリビングルームとバルコニーに露天風呂がある。

十五時のチェックインに合わせ入館し、目一杯満喫しようとプランニングした。

「響さんの水着一式も用意してあるので、このバッグを持って貰えますか?」
「用意周到だな」
「完璧な秘書ですから」

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