『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
温水スパの後にリラクゼーションアロマスパを二人で受け、部屋へと戻って来た。
「遅くなると混みそうなので、先にお夕食にしますか?」
「そうだな」
四階にあるレストランは湘南の海岸線を一望できる絶景で、地元野菜を使った地中海料理を中心としたシーフードレストラン。
勿論、魚介類に合う白ワインが好きな彼のためにチョイスした。
「このサザエ旨いな」
「この牛ハラミのレモンステーキも美味しいです」
勿論、肉料理もふんだんにある。
ここ最近楽しく食事をしてなかったせいか、より一層美味しく感じる。
やっぱり、好きな気持ちは隠し切れない。
好きな人と過ごす時間は、何物にも代えがたい。
デザートはチェリージブレ。
バニラアイスにダークチェリーとさくらんぼの洋酒が効いた温かいソースのかかったもの。
冷たいバニラアイスが程よく溶けて絶品。
「食べ終わったら、少し散歩でもしようか」
「……はい」
今夜だけは自分に素直になろう。
だって、明日になったら……。
*
江の島シーキャンドル(展望台)から三百六十度のパノラマ夜景を堪能する。
「結構いいもんだな」
「……はい」
ライトアップされている施設の灯りと海面に浮かぶ月明り。
小さな白波が立っていて、時の移ろいを贅沢に味わう。
「そういえば、新事業は順調に進んでるんですか?」
「ん?あぁ、それな」
手を繋いで夜景を眺めていた彼が手を離し、優しく肩を抱き寄せた。
「明日、正式に発表する予定になってる」
「えっ?!……私、何も聞いてないですっ」
「今、初めて言ったからな」
「……秘密になってるってことですか?」
「ん、まぁ、そんなとこ」
響さんは少し困ったような顔をした。