『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
部屋に戻ったはいいが、これはどうしたらいいのだろうか?
時間的にも入浴タイムなんだけど、テラスの露天風呂は……まぁ、無理だよな。
備え付けの浴室にでもと思ったけれど、ガラス張り……。
部屋との境界のドアを閉めればいいわけだが、ちょっと俺の方がドキドキしてる。
「風呂、どうしようか」
「あの、響さんは露天風呂に入られますか?」
「う~ん、せっかくだし、入ろうかな」
「それなら、私は浴室のバスタブに浸かって来ます」
「あ、………ん、そうだな」
最悪の場合、天然温泉の大浴場という手もある。
時間はまだ早いし、寝付けなかったら行ってみるか。
“一緒に入ろうか”と言ったら、拒否られるか。
俺の着替えを用意する為にキャリーケースを開けている芽依に背後から抱きつく。
「一緒に入る?」
「っ……」
肩をびくつかせ、固まった。
うん、やっぱりそうだよな。
ってか、入籍するまで手は出さない約束だし。
「ごめん、冗談」
パッと手を離して立ち上がる。
やっと半月ぶりくらいにまともに会話出来るようになったのに。
風呂くらい一緒に入れなくたって構わない。
この先、幾らだって一緒に入る機会なんて腐るほどあるんだから。
「そこら辺に着替え置いておいて」
変にぎくしゃくするくらいなら、割り切った方がましというもの。
俺は服を脱いでテラスにある露天風呂へと。
「寒っ……」
二月の海風は思ってた以上に冷たくて、ブルブルッと体を縮こませた。