『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「見すぎですよ」
「だって、まさか、入って来るとは思ってもみなかったから」
「明日、バレンタインだからです」
「……あぁ、ん」
「一日早いですけど」
「じゃあ、何か?この後は、芽依丸ごと貰っていいの?」
「それはダメです」
「えぇ~、何でだよっ」
「籍を入れるまで、そういうのはナシっていう契約しましたよね?」
「………この状態でも?」
「はい、勿論です」
「拷問だな」
「何とでも仰って下さい」
芽依、無茶言うな。
この状況でおあずけって、何だよ、それ。
だったら、入って来んなよっ!!
あぁぁぁああああ~~っ!!
マジで襲いたい、今すぐ。
落ち着け~~落ち着け~~~。
これは夢だ。
ただ単にマネキンが湯に浸かってるだけ。
うん、そうだ、そうに違いない。
「響さんの髪って、凄くサラサラなんですね」
「っ……」
触んじゃねぇよっ!!
今必死に般若心経唱えてる心境だってのに!!
俺の髪に触れ、柔和な表情を向けて来る。
「俺を試してんの?」
「え?……んっ!」
濡れた色気のある腕を掴み、引き寄せた。
肌が触れ合う。
湯温のせいか、色香にあてられて体温が高くなったのか。
全身を駆け巡る血液が沸騰してるんじゃないかと思うくらいじんじんと疼いて。
「目、閉じろよ」
「っ……」
キスくらいさせろよ。
ずっと我慢してたんだから。
ゆっくりと顔を近づけると、観念したようで瞼がゆっくりと閉じられた。
濡れそぼった唇は艶めかしく、とても柔らかい。
今まで色んな女と厭きるほどして来たはずなのに、今までで一番満たされた感覚がした。