『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
「どうしたんですか?」
「好き、すげぇ好き、めっちゃ好きっ」
「っ……、響さん、どうしたんですかっ、変ですよ」
おかしくさせたのはお前だろ。
必死に冷静さを保とうとしてんのに。
「挙式はともかくとして、入籍だけ先にするんじゃダメか?」
「へ?」
「芽依が欲しくて我慢できない……」
「っ……」
高校生じゃないんだから、我慢なんて簡単にできると思ってた。
今まで散々遊び尽くして、嫌というほど女を抱いて来たのに。
肝心の欲しい女が手に入らない。
今までのツケが纏めてどーんっとやって来たってのは理解できる。
自業自得だし、当たり前なんだけど。
いやもう、この状況で我慢したくない。
「入籍どころか、婚約もまだしてませんから、私達」
言われなくたって分かってるって。
生真面目な芽依を相手に、きちんと順を追って進めないとならないことくらい。
だけど、そんな感情をセーブできるほど今の俺、脳が正常に働いてないんだって。
「では、代替案で如何ですか?」
「代替案?」
「はい。……契約を不履行にしないためにも、私にも一つ負荷をかけて下さい」
「………」
負荷をかけるって、何?
俺の望む要求を呑むってこと??
「何でもいいの?」
「内容にもよります」
きっと芽依のことだから、行為関連は完全スルーするだろうな。
だったら望むものは一つしか無い。
「じゃあ……」
俺はとあるものを彼女に差し出した。
「えっ……これって……」
「ここにサインして」
「………」
「書くくらいなら出来るでしょ」
「………」
「いつでも出せるように書いて欲しいんだけど」