『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす

普段は見れない彼が見れて幸せ。
最後の最後に最高の贈り物だよ。

セットしてある髪を掻き乱すみたいに指を滑らす彼の手をそっと掴む。
そんな私に驚いたのか、私へと視線を寄こして来た。

「好きです、……響さん」

少し照れてる彼にキスをした。
もう私には未来が無いのだと思ったら、無意識にキスをしていた。

もう思い残すことは何もない。
この十年、彼を好きになれてよかった。
こんなにもカッコよくて素敵な人が私の初恋の相手なんだもん。

涙腺が途端に緩みだす。
メイクが崩れちゃう、我慢しなきゃ。

「芽依」

涙が零れそうでぎゅっと瞑った瞼に彼がキスをした。
優しく、そっと触れるだけ。
だけど、それがこの上なく嬉しくて、心地よくて。

今目を開けたら、涙が零れてしまいそう。
お願いだから、止まって……。

「……ん?!」

掴まれていた指先に違和感を覚えた。
恐る恐るゆっくりと瞼を持ち上げると。

「ッ?!!」

いつの間にか、左手薬指に指輪が嵌っている。

「初めて好きななった女性も、初めて愛した女性も、この命がある限り生涯愛すると決めた女性も、芽依だよ。如月芽依さん、俺と結婚して下さい」
「っ……」

温かい雫が溢れ出した。
例え今だけの倖せだと分かっていても、やっぱり嬉しくて……。

「返事は要らないよ。もう俺のモノだから」

軽くウインクした彼。
色気が駄々洩れだ。

頬を伝う涙をそっと彼が拭っていると、彼のスマホに着信があったようだ。

「はい、………ん、分かった、直ぐ行く」

通話を切った彼が腰を上げた。

「そろそろ行かないと」
「……はい」
「それ、俺がいいって言うまで絶っっっっ対外すなよ?」

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