『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす



創立百周年の祝賀パーティーがスタートした。
社長の挨拶から始まり、取引先の社長らが祝辞を述べる。

副社長を視界に捉えながら、会場内を見回した、その時。
ッ?!!!
えっ、……何でいるの?
招待客の中に自分の両親の姿を見つけた。

あ、そうか。
大手製薬会社同士だし、大きな式典などでよく顔を合わせるものね。

私は裏方だから、あまり会場内をウロウロしたことがない。
常に彼の動向を先読みして、その対応をして来た。

この景色を見るのも、今日が最後だ。
華やかに着飾ったドレスに視線を落とした、次の瞬間。

「それでは、副社長の仁科より、皆様に一言」
「本日はお忙しい中、お越し頂きまして誠にありがとうございます。弊社は創立百周年という長きにわたる歴史の中で、この度初めて、キサラギ製薬様との合同研究事業を立ち上げることとなりました。その第一弾と致しまして……こちらをご覧下さい」

会場内の照明が落とされ、薄暗くなった会場内のステージに映し出されたのは『安心して使える新コスメブランド“Légume”』(訳:野菜)と記されたスライド。

収穫時に出る廃棄分や廃棄後に残った部位の再利用。
また野菜だけでなく果物も含まれると動画で説明がなされ、全国の農産物の生産者が動画出演しながら、この新事業の大切さを訴えている。
廃棄される野菜や部位を使って、自然な色と素材を活かしたオーガニックコスメだ。

「如何でしたか?あるようで、今まで大手で取り扱って来なかった取り組みです。SDGsの観点に於いても、今後益々注目される分野です」

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