『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
頬にひんやりとした感覚を覚え、重い瞼を押し上げると。
「んっ……?!」
見知らぬ女が、口移しで白い錠剤を押し込んで来た。
ん?
こいつ……、ファルン製薬の広告塔になってる女優のアーリン・ファズナー(二十六歳)だ。
確か、パーティー会場で軽く挨拶して、……その後、如月が席を外した際に声をかけて来たよな?
何故、俺はここにいる?
いつの間にホテルの部屋に来たんだ?
熱のせいで頭が朦朧としているのか。
この女が飲ませた薬のせいで朦朧としているのか、分からない。
体が熱い。
頭がクラクラする。
ひんやりとした指先が首筋からYシャツの襟元へと移動し、ネクタイが抜き取られ、ボタンが外されてゆく。
マジか。
俺、この女に犯されんの?
女優というだけあって、見た目綺麗ではあるが、好みのタイプじゃない。
好きでもない女に犯されるって……マジ、最悪なんだけど。
同意の下でするなら、文句はない。
けれど、薬を飲ませてまでするのは、違うだろ。
完全に露わになった肌。
首筋から胸、腹へと指先が這い伝う。
手足は拘束されていないようだ。
薬を飲ませたから安心しているのか。
意識を集中させたら、何とか動けるか?
ベルトが外され、ファスナーが下ろされる。
マジで勘弁。
こんな状態でこいつと寝るとか、ありえねぇって……。
女の意識が俺の大事な部分へと向けられた、その時。
俺は渾身の力を込めて、女のみぞおち目掛けて拳を見舞った。
俺に馬乗りになっていた女が、ベッドの上に横たわるようにして気絶した。
今のうちに……。