『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
今まで散々遊び尽くして来たから、その罰なのかもしれない。
もう性欲の処理目的で女を抱くのは止めようと思った。
いや、思い知らされたと言うべきか。
彼女に怖い思いをさせてしまった俺は、同じような状況を作ってしまったら、彼女のトラウマになるんじゃないかと思って。
だから、普段はネクタイを結んだり、ジャケットを羽織る手伝いを率先してしてくれていた彼女が、あの日以来、全く近づかなくなった。
きっと、俺のことが怖いのかもしれない。
あぁいうシチュエーションが怖くなったのかもしれないから。
七年もの間、ずっと心に想い続けて来たけれど、想いを寄せることすら迷惑なのかもしれないと思うようになっていた。
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「それでは、只今より抽選を始めます!!」
ビンゴ大会の開会の挨拶を済ませ、進行役の担当者から合図を送られ、数字が書かれたボールを引き抜く。
「五十八番!最初の数字は五十八番!!」
東京ドーム三個分の敷地に溢れんばかりの人・人・人。
夏の暑さも追い風となり、会場のボルテージが一気に上がってゆく。
「如月」
「はい」
「挨拶してくるから、ビンゴしてて」
「あ、はい」
協賛会社の社長を発見し、挨拶に出向く。
*
およそ五分ほどの挨拶を済ませ、彼女の元に戻ると、何やら背の高い男性と話をしている。
「如月」
「あっ、副社長」
「そちらは?」
「初めまして、J自動車の鮫島と申します」
差し出された名刺には『J自動車株式会社 代表取締役専務 鮫島和樹』と記されていた。
「この度は、当社に御社の自動車を……大変お世話になります」
「いえいえ、弊社の方こそ、毎年沢山ご購入頂きまして、有難うございます」