『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす



「は?じゃあ何、お兄さんに跡継ぎが授からないからって、子供だけつくってその子を寄こせってこと?」
「………はい」
「意味分かんねぇ、というより、親だよな?」
「……うちの両親、兄しか眼中になくて。私はいつだってお荷物のような邪魔者扱いで。早く家から排除したくて、大学に入ってすぐくらいからお見合いさせられて……」
「知ってる」
「え?」
「俺が何も知らないとでも?」
「………っ……」

彼女が毎月のように見合いをしていた経緯を知ることが出来たけれど。
知っただけじゃ何も解決にはならない。

「見合い、ぶち壊してやるから一日俺に付き合え」
「は?……いえ、結構です。自分で処理出来ますから」
「じゃあ、俺が見合い相手になってやろうか」
「……それこそ、意味分からないですから」
「親父に言って、縁談持ち掛けてやるよ。業界のツートップが縁戚関係になれば、怖いもんなしだろ」
「そんな単純な話ではなくてですね……」

明らかに困り果てたような表情を浮かべ、視線が泳いでいる。
そんなにも俺が嫌なのかよ。
マジでへこむ。

「じゃあ、彼氏になってやる」
「はい?」
「ドラマや小説でよくある、恋人のフリとかじゃないぞ」
「………」
「本気で愛してやるから、俺の女になれ」
「ご冗談は、寝てから仰って下さい」
「女遊びを卒業すると言っても?」
「副社長の女性関係に興味ありません」

ピシャッと言い切られてしまった。
けれど、そんなことは想定内。
“わぁ、ありがとうございます!”だなんて言葉、期待しちゃいねぇよ。

「逃げれるもんなら、逃げてみろ」
「ッ?!」
「俺が捕まえるか、お前が逃げ切るか、勝負だ」
「っ……」
「ぜってぇ逃がさねぇから、覚悟しろ」
「っっっ~~っ」

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