『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
とうとう話してしまった。
まぁ、宣言した手前、成り行きなんてどうでもいいと思ったからなんだけど。
それでもやっぱり気恥しい。
「まぁ、最初はどこの誰かも分からなかったしさ、調べさせたんだよね」
「………」
「あ、引くなよ?別にだからって、どうこうしようとか考えて調べさせたってわけじゃなくて。ただ単に知りたかったんだよね」
「………」
「見合いの一部始終を目の当たりにしたからさ、どんな子なのか、興味が湧いて。で、調べたらライバル会社の令嬢だって分かって……」
「……それで?」
「まぁ、当然のことだけど、アクションは起こせないよな、変に勘繰られても嫌だったし」
「………」
「自慢じゃないけど、女性にはモテる方だと思うんだよね、俺。だけどさ、別に好かれたいとかは思ってなくて。常に周りに女はいても、心が動かされることは無かったんだけど」
「………」
「初めてだったんだよ、心の奥がぶわっとする感覚に陥ったの」
「………」
「だから、それからずっと見てたんだ……芽依のこと」
「ッ?!……ストーカーってことですか?」
「まぁ、違うとは言えないか」
「っ……」
「けど、害は無かっただろ?」
「まぁ、……はい」
「そしたら、ある日、俺の前に現れたんだよ、芽依が」
「………入社試験の面接、……ですね」
「ん。まぁ、最初はスパイだと思ったんだけど」
「それは分かります。覚悟の上で受けましたから」
「何で、うちを受けたの?」
「………どうしても仁科製薬に入りたかったので」
「仁科の情報を得るために?」
「いえ……、仁科製薬のお役に立ちたくて」
「家業のキサラギだってあるのに?」
「……はい」
彼女の瞳は嘘を吐いている風には見えない。