『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
お前を俺のものにすることしか考えてねぇよ
副社長とデートした翌日。
今日は自分の誕生日。
一日早く誕生日を祝って貰った。
それも、十年も片想いして来た大好きな人と二人きりで。
夢のような一日だった。
普段から彼の傍にいるけれど、勤務中は心に強力な鍵を掛けている。
ううん、鍵を掛けたものをジッパー付きの厚手の袋に入れて、それを何重にも重ねてパッキングしてる。
鍵が壊れても大丈夫なように、幾重にも重ねてパッキングしておいたら漏れ出さないと思って。
彼は女性に対して、『一度』しか関係を持たない。
彼に近づいた女性の末路だ。
『彼女』と噂される女性であっても、一度しか寝ないらしい。
だから、彼の傍にいたいなら、決して関係は持たないというのが鉄則のようなものだ。
大学時代にも女友達はいた。
かなり綺麗な女性で、女性からも好かれるような性格もいい女性だ。
彼女には恋人がいて、その恋人が彼の友人でもあった。
だから、必然的に『遊び』の対象外だったのだろう。
長年彼を見続けて得た情報を整理して、行きついた先が『近くで見守る=傍にいられる』というベストな形だ。
だから私は、『秘書』という立ち位置で彼の傍にいられる幸せを選んだ。
この溢れ出しそうな想いが更に膨らんだとしても。
一晩限りの関係よりも、一日でも長く彼の傍にいたい。
例え彼が結婚したとしても、『秘書』であり続けられるのであれば、傍にいられるのだから。
胸元に光る大粒の石。
不相応なほどの存在感を成している。
それを指先でなぞり、心の高鳴りを静める。
出勤用のスーツに着替えるためそっと外し、ジュエリーボックスにしまった。