『愛獣』放埓な副社長は堅固な秘書を攻め落とす
彼女の口から、意外な言葉が返って来た。
“そういう関係”を気にしてるってこと?
今までの女みたいにされると思ってるってことか?
“特別”だと伝えたところで、今まで散々し尽くして来てるから、信用度はマイナスだろう。
分かり切っているだけに、後悔してももう遅い。
俺から視線を逸らし、口元をぎゅっと噛み締めている。
そんな彼女の腕を引き寄せた。
「んっ……っ…」
ソファーに倒れ込んだ芽依。
何が起きたのか分からないといった表情をしている。
そんな彼女に覆い被さった。
「俺が信用できないなら、芽依がいいというまで一切手を出さないと約束すれば納得できるか?」
「……え?」
「それとも、結婚するまで手を出さないとでも誓えばいいのか?」
「っ……」
「俺は本気だ」
誠心誠意という言葉を行動で示すというなら、これが妥当だと思った。
「条件を出せ」
「………」
「どんなことでも呑むから」
「………」
「一つとは言わない。幾らでも出していいぞ」
「っ……」
「俺の目を見ろ」
俺から視線を逸らした彼女の顎を掴んで戻す。
今はぐらかされたら、また振り出しに戻ってしまいそうで。
「契約書を作ってもいいですか?」
「契約書?」
「はい」
「別に構わないけど」
「……では、パソコンをお借りしても宜しいでしょうか?」
「あぁ」
突然の提案。
それも、予想もしない発想が彼女らしい。
一体、どんな内容なのか、今から見るのが楽しみだ。
仕事用のノートパソコンをリビングテーブルに持って来ると、彼女は手際よく契約書を作り始めた。