ひねくれ令嬢の婚活事情
しばらくの間、気まずい沈黙をやり過ごした後、彼女は一瞬俯き、すぐさま顔を上げたかと思うと、打って変わった鋭い眼差しでオレリアを睨みつけた。
「この間の舞踏会、マティアス様と踊られているオレリア様をお見かけしました」
「はあ、それがなにか……」
思いもよらぬ話題だった。オレリアは面を食らって呆然とした。
「クロード殿下の次は、マティアス様を誘惑されたのですか?」
「…………仰っている意味が分かりませんわ」
「マティアス様が、貴女のようなはしたない方をお誘いする筈ありませんもの。マティアス様はお優しくていらっしゃるから、お断りできなかったに違いないありませんわ。それに、マティアス様には貴女よりも相応しい方がおられるのです!あの方の評判に傷を付けるのはおやめください!」
頬を上気させ言い募るソフィーを前に、オレリアは顔をしかめた。とんだ濡れ衣だ。妄想も甚だしい。
オレリアは小さくため息をつき、呆れを隠すことなく彼女を見下ろした。